アメリカのシークレットサービスのエージェントといえば、襟にピンバッジを付けていることでほとんど誰もが知っている。ピンバッジは、チームメンバーを識別するためのシステムの一部であり、ダークスーツ、イヤピース、ミラーサングラスと同様に、シークレットサービスのイメージと深く結びついている。しかし、あの非常に目立つピンバッジに何が隠されているかを知っている人はほとんどいない。
シークレットサービスが11月26日に提出した調達通知書によると、同局はマサチューセッツ州のVHブラックイントン社に「特殊な襟章識別ピン」の契約を授与する予定だという。
シークレットサービスが新たに購入したラペルピンの価格と購入数は非公開となっている。しかし、過去の発注記録から状況はある程度明らかになる。2015年9月、シークレットサービスはラペルピン1回の発注に64万5,460ドルを費やしたが、購入額は公表されていない。翌年の9月には、ラペルピン1回の発注に30万1,900ドルを費やし、その次の9月にも30万5,030ドルでラペルピンを購入した。連邦政府機関全体では、2008年以降、米国政府はラペルピンに合計700万ドル弱を費やしている。
警察署向けのバッジを主に製造しているブラックイントン社は、「新しいセキュリティ強化技術機能（編集済み）を備えたラペルエンブレムの製造に関する専門知識を持つ唯一の企業」であると、シークレットサービスの最新の購買文書に記載されています。さらに、シークレットサービスは8ヶ月かけて他の3社のベンダーに連絡を取りましたが、どのベンダーも「いかなる種類のセキュリティ技術機能を備えたラペルエンブレムの製造に関する専門知識を提供」できませんでした。
シークレットサービスの広報担当者はコメントを控えた。ブラックイントン社の最高執行責任者（COO）であるデビッド・ロング氏は、Quartzへのメールで「そのような情報を開示する立場にはありません」と述べた。しかし、法執行機関の顧客に特化したブラックイントン社のウェブサイトには、シークレットサービスがどのような情報を得ているのかを示唆する手がかりが掲載されている。
ブラックイントン社は、「スマートシールド」と呼ばれる特許取得済みの認証技術を提供する「世界で唯一のバッジメーカー」だと述べている。各バッジには、バッジの所持者がその所持を許可された人物であること、そしてバッジ自体が本物であることを確認するために必要なすべての情報を収録した機関データベースにリンクする小型のRFIDトランスポンダーチップが搭載されている。
シークレットサービスが発注するピンバッジの全てに、このレベルのセキュリティは必要ないかもしれない。ホワイトハウス職員やいわゆる「クリアランス」職員に支給されるピンバッジには、護衛なしで特定のエリアに立ち入ることが許可されている者と許可されていない者を職員が区別できるものがあり、数種類ある。ブラックイントン氏によると、同社独自のセキュリティ機能には、色が変わるエナメル、スキャン可能なQRタグ、そして紫外線下で浮き出る改ざん防止の埋め込み型数字コードなどがある。
シークレットサービスも、内部犯行が潜在的な問題となることを認識している。過去に行われた、それほど隠蔽されていないラペルピンの注文からは、ピンが工場を出荷される前から厳格なセキュリティガイドラインが適用されていることが明らかになっている。例えば、シークレットサービスのラペルピン製作に携わる者は全員、身元調査に合格し、米国市民でなければならない。使用した工具と金型はすべて、毎日の作業終了時にシークレットサービスに返却され、未使用のブランクは作業完了時に引き渡される。工程のすべての工程は、「安全な部屋、金網の檻、またはロープで囲まれた区域」といった制限区域内で行われなければならない。
ブラックイントン社は、自社の作業場にはすべての出入り口にビデオ監視システムが設置され、第三者機関による24時間体制の警報監視システムも備えていると述べ、シークレットサービスによる「検査と承認」を受けていると付け加えた。また、厳格な品質管理体制についても言及し、抜き打ち検査によって警官のバッジに「中尉」のスペルミスが複数回発生していたことを明らかにした。
公開されている連邦政府の記録によると、ブラックイントン社は1979年以来、米国政府に製品を納入している。同社は当時、退役軍人省に1万8000ドルの製品を販売していた。今年、ブラックイントン社はFBI、DEA、連邦保安官局、そして国土安全保障捜査局（ICEの捜査機関）向けのバッジ、そして海軍犯罪捜査局向けのピンバッジ（おそらく襟章）を製造した。
投稿日時: 2019年6月10日